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Re-MiX03[Isahaya]

2022年8月20日
読了時間: 7分

更新日:9月26日

Category: Renovation house

Architect: Murayama

Date: January, 2020

Location:Isahaya city, NAGASAKI



思い入れのあるの家を自分たちらしい感性で

この先の未来へと継承していくことは、

築年数だけで価値が下がってしまう

そんなものさしへのアンチテーゼに。

家族の記憶をとどめたまま

もう一度、いまを生きはじめています。

 


ゆるやかに変わってゆく余白と創造。

 


 リノベーションは新築の劣化版、ではありません。「予算の都合で新築を諦めたという妥協の選択肢だと思っている人がまだまだ多い。だけど、そうじゃない!今あるものを自分たち好みに最適化できる、とても前向きで面白いアプローチ方法なんだと伝えたい」と、ご主人の言葉に熱がこもります。キッチンやお風呂など、一部分だけをきれいにするリフォームとも違うし、すべてを新しくすることでもない。どこに重きを置き、コストをかけるかの「戦略」こそが大事だといいます。この選択を間違わなければ、新築以上の家にアップデートすることだって可能なんだということ。それを証明するのがN邸です。

 とはいえ、どこにお願いするかで結果は大きく変わるもの。設計力、施工力の差がそのまま家の質に直結するからです。建築資材などを取り扱う会社に勤務するご主人なだけに、相棒選びに一切の妥協なし。工務店やハウスメーカーの知り合いも多いし、それぞれの強みも知っている。知識も豊富。「第一優先は温熱環境を最新基準に引き上げること。見た目だけ新しくて、住み心地は変わらないなんて意味がない」。一方の奥さまは「掃除が苦手、というか大キライ。だから床に物を置かなくていいよう収納にこだわりたくて。どこに、なにを、どれくらい入れるのか。すべて書き出しました。これを入れたいから、こんな収納がほしいと」。2人ともこだわりこそ違えど、熱量は同じ。そこでお願いしたのが、断熱に対する並々ならぬ思いがあり、造作家具が得意なムラヤマだったというワケです。


 目指したのは旅館のような家。日々の暮らしを足元から支える床は頑丈で、水や湿気に強い無垢の栗の木に。はっきりと力強い木目が、この家が40年近く紡いできた風格や落ち着きと不思議とリンクしているようです。「子どもがバスケ部なので、ドリブルし放題と喜んでます」。そんなほほえましい家族の日常をドラマチックに照らすさまざまな光。窓から柔らかく入ってくる自然の光、照明が描くゆらぎのある光。季節や時間によって移ろうさまざま光が陰影を浮かび上がらせ、その美しさにはっと見とれてしまいます。こうした光はもちろん、風や温度といった形のないものも、家をつくるうえで欠かせません。極端にいえば、カタチはどうにでもなりますが、実体のないものはセンシティブ。それは断熱も同じです。「当時はもうハコ、ハコうるさくて。そこまで断熱せんばと?って聞いたら、いかに断熱が必要か夫に力説されて。天井に断熱を入れ、その効果を高めるため2階の窓は内窓に。はじめはピンと来なかったけど、住み始めてその大切さがわかるようになりました」と照れ笑いする奥さま。その横でご主人が満足そうにうなずきます。


 そんな居心地の良さに呼応するように、空間が清々しく保たれているのは奥さまが所望した収納計画のおかげ。その象徴がリビングにあるテレビボード。裏手にまわると、家族3人分のファミリークローゼットに姿を変えます。「帰宅後に上着やバッグ、ランドセルなど日常的に使うものをそのまま収納できるようにというのが狙い。おかげでリビングがきれいに保たれています」。その横には洗面スペースもあり、手を洗ったらそのまま階段下のスタディスペースでリビング学習と、おかえりなさい動線もスムーズです。視線を転じると、キッチンもまた合理的な造り。カウンター、壁付け、対面の3面で構成されたコの字型キッチンは動線がコンパクトで、作業がしやすいのが特徴。収納スペースも広くとれるうえ、奥さまの身長に合わせた造作のキッチン棚は使い勝手も申し分なし。「身長が小さいから、既製品だと手が届かない。そしたら絶対使わなくなるから」。さらに収納はすべて取っ手レス。見た目がすっきりするだけでなく、ぶつかったりなど生活動線の妨げにもなりません。わずかな差かもしれませんが、こうした細かいところにN邸らしさが宿っています。


 こうした「らしさ」は空間の使い方にもあらわれています。そのひとつがリビングとダイニングを切り離すこと。「リビングとキッチン、ダイニングをワンフロアにして広く使うのが主流なんでしょうけど」と前置きして、「ごはんを食べるときは会話に集中したくて。テレビがあったら見ちゃうでしょ」と奥さま。子どもたちと一緒に過ごす時間はあっという間。平日は学校があり、休日も部活動で出ていく。これは子どもたちに限らず、夫婦にも当てはまること。だからこそ、の計画というワケです。さらに2度目となる数年前のリノベーションで、リビングに隣接する和室をセカンドリビング化。それに伴い、ご主人待望のペレットストーブも設置しました。「実はここ床の間なんです。この引き戸を開けるとよく分かると思います」。ご主人のその言葉に従うと、立派な床柱が姿をあらわします。「今は収納スペースにしていますが、以前ここには仏壇があったんです」。構造上どうしても抜けない柱があったりなど、なにかと制約も多いリノベーション。それを前向きに捉えることで、見えてくる光があること。かつての縁側を利用して小さな書斎をつくれたのも、以前の家の名残や風格をとどめつつ、今の暮らしとマッチさせたからこそのアイデアです。


 家族みんなの時間も、それぞれの時間も。家の中に複数の居場所ができたことで、「家族全員、アウトドア派からインドア派になりました」とうれしいお言葉。「子どもたちが友だちを連れてきたがるというか、友だちが家に来たがる。それは大人も同じですけど」。いろんな世代が集える居心地のよさは、ご夫婦が目指した「旅館のような家」であることの証しでもあります。


 奥さまの実家であるN邸は代々、2世帯で暮らしてきた家系。「以前は祖父と祖母、父と母が住んでいました。今は父と母、私たち家族が一緒に暮らしています」。それぞれの思いが地層のように積み重なったこの家はかけがえのない場所。「暮らしの痕跡を残しながら、住み継いでいけるんだよと、勇気づけられる存在になりたい」というのがご夫婦の願い。子どもたちが将来、この家とどう向き合ってくれるのか。その日を楽しみに待ちながら。



  • リビングルーム
    リビングルーム


暮らしやすさを追求した2世帯の暮らし。

ゆったりと落ち着いた雰囲気のリビングは家族皆でコミュニケーションをとる大切な場。テレビ裏にはリビング収納を設けお子さまの学校グッズなどをすべてここに。

また、清潔感あふれるキッチンの横にも収納物に合わせて造作した大容量の収納棚を設置。扉に取っ手がないことでよりすっきりとした印象になった。

元々あった通り柱と新たなつけ柱の間には登りロープを取り付けお子さまの遊び場を。

階段下のスタディコーナーも空間を有効活用したこだわりのスペース。

玄関や和室は趣のある雰囲気をそのままにご家族それぞれのこだわりを巧みに融合した納得の住まいが完成した。

リビングルーム|モダンで落ち着きのあるリビングルーム。TV壁の裏は収納スペース


LDK①|階段下を有効活用したスタディコーナー。室内窓もアクセントに


パウダールーム①|清潔感溢れるパウダールーム



キッチン①|ホワイトとウッドが好相性のキッチン


LDK②|あえて低くしたTV面の壁。天井を連続させることで空間に広がりを


パウダールーム②|天井までのハイドアが相まって広く明るい印象のパウダールーム



オリジナルキッチン|直線的な動線で家事もスムーズに。取っ手レスな造作収納棚もこだわりポイント


キッチン|使い勝手のいいコの字型キッチンは奥様のこだわり



リビング|ロープ一本でリビングにお子さまの遊び場を


和室|リビングとつながる趣ある和室



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