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Re-MiX07[Nagasaki]

2023年9月6日
読了時間: 5分

更新日:9月26日

Category: Renovation house

Architect: Murayama

Date: August, 2023

Location:Nagasaki city, NAGASAKI



必要なものと、そうじゃないもの。

その見極めには正解があるわけじゃない。

大切なのは一時的な胸の高鳴りや直感にとらわれず、

自分なりの明確なものさしをもつこと。

快適さ、安心感、光のゆらぎ、風のささやき。

目に見えないものにこそ本質が宿っています。

 


本質をとらえて、未来を逆算する。

 


 祖母が長く暮らした地域で親しみがあり、気取りのない雰囲気に満ちた町。昔ながらの商売が息づく商店街が残る一方で、大通りに出れば路面電車が走る利便性の高さから人気の高いエリアにM邸はあります。「私たちがいま住んでいるのは、もともと祖母が建てたお家。といっても、骨組みだけを残してフルリノベーションしているから、その面影はあまりないかもしれませんね」。はじめにそう教えてもらわなければ、新築と思ってしまうほど、イマドキの空間だから。「建てられたのは50年以上前でしょうか。毎年、外壁を変えたりしながら、手もお金もかけて住んでいたから、不思議と古さはなくて。むしろ、夏休みに帰省するたび、今度はどこが変わっているかなと楽しみにしていたくらい」と、穏やかな表情で昔を懐かしみます。


 とはいえ、間取りの不便さは考えもの。もとの家は1階にリビングとダイニング、2階に客間と書斎、3階に寝室という間取りでした。「住宅が密集しているせいか、リビングの日当たりがよくなくて。それに駐車場もなし」。この先、どこでどう暮らしていくか。いろいろと悩んでいるとき、LDKだけを1500万円ほどでリノベーションした友人の存在がひとつのきっかけをくれました。「これくらいの金額でできるならアリかもと。それに祖母の家はとにかく立地がいい!同じような土地を買おうと思っても、金銭的にもなかなか手が出ない場所ですから」。そう決めたてから、自分たちの理想をかなえてくれる相棒探しがはじまりました。「好みが合いそうだなと、ムラヤマさんのインスタをよく見ていました。でも諫早の工務店だし、そもそも新築しか建てていないよね」と。よくよく調べてみるとリノベーションの依頼も受けていることが判明。だけど、即決はしませんでした。


「いいな」と思った瞬間、ネガティブな要素は見えなくなりがち。でも一度深呼吸して考えると、違った面が見えてきます。だからこそ慎重に。「ほかの会社もいろいろと調べました。ぱっと見はいい感じだけど、どこか似たり寄ったりで。その点、ムラヤマさんが手掛ける家は、その人らしさ全開というか。1軒1軒が全部違うんです。やっぱり、ここだと」。目先のことだけにとらわれず、20年後、30年後をしっかりと考えて答えを導き出すこと。奥さまの揺るぎないこの信念は、リノベーションを行ううえでの強い柱となりました。ムラヤマの担当者も、「ものを見る目がある」「先を見通している」と関心するばかり。


 これから長く住み続けるにあたり、建物を支える基礎も補強。鉄骨で躯体がしっかりしていたため、それを生かすことに。これだけで数百万円の節約になったと言います。さらに住み心地を左右する断熱は最新のものにアップデート。窓も補助金を使ってトリプルガラスに変更しました。「床下には24時間換気機能がついたマーベックスを導入。これは室内に新鮮な空気を取り入れ、汚れた空気を外に出すというもの。初期費用こそかかりますが、エアコンの設置台数も減らせるし、光熱費も抑えられる。なにより空気が気持ちいい。今後の住み心地にかかわってくる性能には出し惜しみしませんでした」。安いからと安易に選ぶのではなく、お金をかけてでも満足の行く方を。「住宅にかかる費用は消費じゃなくて投資」とは奥さまの名言です。


 綿密な打ち合わせを経て導かれたのは、いまの暮らしにマッチする大幅な間取り変更。1階にはビルトインガレージとお風呂やランドリーといった水回りをレイアウト。2階にLDKを移動させました。空に近くなったぶん、採光性もぐっとアップ。でも理由はそれだけではありません。1階から3階までをつなぐ階段の蹴り込み板をなくし、スケルトンにしたことで光と風を程よく透かしてくれます。加えて2階と3階吹き抜けでつなげ、光がふわりと舞い降りるように。窓のカタチや大きさも、周囲の住宅に配慮しながらプライベートもしっかり確保。新築の家は空間づくりの自由度が高く、ある意味なんとでもできます。けれど、なにかと制約がある一軒家のリノベーションで大切なのは随所に知恵を絞ること。だからこそ頭をひねり、住まい手とセッションしながら練り上げる濃密な楽しさがあります。


 4人で暮らすにはコンパクトな家ながら窮屈さを感じさせないのは、おおらかな空間の使い方と、家全体が呼吸しているのような自然素材がもつ清々しさのおかげかもしれません。「家族とともに育っていくような家にできたら」。だからこそ、空間を印象づける素材を吟味。「床はぜったい無垢にしたくて。無垢ゆえの粗さもあるけれど、本物の素材でしか出し得ない存在感があります。床は栗、スケルトン階段のステップはオーク。テレビボードもオークで造作してもらいました」。そう話してくれた後、「なにか気づきません?」ときらきらした瞳でこちらに視線をちらり。「このテレビボードの扉、模様がつながっているんです。一枚板を棟梁が切り分けてはめてくれて。さすが!と感心しました」と、うれしそうに答えを教えてくれました。ムラヤマが得意とする造作家具は1cm単位で寸法やデザイン、素材が選べるいわばオーダーメイド。テレビボードの下はお掃除ロボットの基地でもあります。

奇をてらわないけれど確かなもの。時代や流行に流されない誠実なもの。必要なものを見極め、自分が気持ちいいと思える置き方、収め方を考える。そんな選択の積み重ねがM邸の心地よさにつながっています。「大切にしているのは経年劣化ではなく経年美化。使い込んでいくうちに味わいが増していくものに愛着を感じます。床や壁のキズも懐かしく、いとおしく思える日がきっと来る。その日を楽しみにしています」


 Mさんのこの感覚はきっと、家に手をかけて暮らしを大切にしてきた祖母ゆずり。「家にいる時間が楽しくて。気がととのう感じがします」と。住まい手や姿かたちが変わっても。この家が宿したあたたかな記憶がいい気となって、見守ってくれているからに違いありません。






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